粒子線治療はがんの病巣をピンポイント照射します

粒子線治療は、サイクロトロンやシンクロトロンという加速装置で光速に近いスピードまで加速された陽子や重粒子を、がん組織に照射する治療法です。がん病巣をピンポイントに狙い撃ちすることができるため、「切らずに治す」がんの最新治療として注目されています。

通常の放射線治療で用いられるエックス線は、体をつきぬけてしまうため、病巣の前後にある正常の組織もかなりの線量を受け、副作用が生じる原因になります。

これに対して、粒子線は体内に入ってもすぐにはエネルギーを放出せず、停止する直前に集中的にエネルギーを放出して、大きな線量を組織に与える性質があります。

これを発見者の名をとってブラッグ・ピークと呼びますが、がんの治療では病巣の深さや大きさに合わせてこのピークの深さや幅を拡げることにより、がんをピンポイントを狙い撃ちすることが可能となり、副作用を減少させることができるようになりました。

手術の必要がないため傷跡は残りませんし、痛みもありません。治療時間も1回当たり30分と短く、体への負担も少なく高齢者の方にも適しています。

早期の肺がんなら1日で根治できるケースもありますし、エックス線ではなかなか治すことのできない肝臓がんでも、粒子線だと切らずにきれいに治せることが多いとされています。

治療準備のために血液検査や心電図、呼吸機能検査を行なうので、最初は入院が必要となりますが、治療中は通院が可能な人は外来で治療を行い、普段通りの生活を送ることができます。

予定の照射回数が終了したら、効果判定のためのCTやMRIによる検査を受けて、治療終了となります。