フルオロウラシル(代謝拮抗剤)
商品名(製造・販売会社)
- 5-FU(協和発酵工業)
- カルゾナール(東菱薬品工業)
- ベントン(旭化成ファーマ)
- ルナコール(沢井製薬)
- ルナポン(沢井製薬)
DNAの合成に必要な物質の1つにウラシルがありますが、この薬はウラシルに似た分子構造を持ち、ウラシルの代わりにDNAに取り込まれてその合成を阻害し、抗腫瘍効果を発揮します。多くのがんに効果があり、現在でも消化器がんを中心に広く用いられています。
適応となるがん
胃がん、大腸がん、乳がん、子宮がん。注射剤は、肝臓がんや膵臓がん、卵巣がん、頭頚部がん、肺がんなどに用いられます。皮膚がんには軟膏が用いられます。
大腸がんの化学療法では、フルオロウラシル(注射薬)が中心的な役割を果たしており、再発・転移例、手術が不可能な症例に対して、次にあげるフルオロウラシルを含んだ多剤併用療法が、標準的な療法として行われています。
- フルオロウラシル静脈内注射+レボホリナート
- FOLFOX(フルオロウラシル持続注入+レボホリナート+オキサリプラチン)
- FOLFIRI(フルオロウラシル持続注入+レボホリナート+イリノテカン)
- IFL(フルオロウラシル静脈内注射+レボホリナート+イリノテカン)
食道がんでは、フルオロウラシルとシスプラチンの2剤併用が最も一般的とされており、主に他臓器への転移がある場合に行なわれます。また、頭頚部がんに対しても同じ組み合わせがよく用いられます。
胃がんではフルオロウラシル+シスプラチン、メトトレキサートの組み合わせで多く用いられてきましたが、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(TS-1)の登場により、現在では、進行・再発胃がんに対してそちらを第1選択薬とするケースが多くなっています。
主な副作用
剤型によって差はありますが、激しい下痢や出血性腸炎などの消化器症状、それに伴う脱水症状などの重篤な副作用が報告されています。そのほかにも重大な副作用として、高度の骨髄抑制や間質性肺炎、うっ血性心不全、肝機能障害や黄疸、急性腎不全、白質脳症などがあります。
一般的な副作用としては、さまざまな消化器障害のほか、めまい、しびれ、倦怠感などの精神神経症状、脱毛や色素沈着などの皮膚症状、発疹などの過敏症、腎機能や肝機能の低下、発熱などがみられます。
使用上の注意点
TS-1との併用で重い血液障害や下痢などの消化器障害が増強することがあります。また、抗血液凝固剤のワルファリンカリウムはこの薬の作用を強めて出血傾向を生じることがあります。