強い毒性のある植物成分を応用した抗がん剤を植物アルカロイドといいます。ビンクリスチンやドセタキセルなどの微小管阻害剤と、イリノテカンやエトポシドなどのトポイソメラーゼ阻害剤があり、それぞれがん細胞に対するはたらき方が違います。
細胞分裂が行われる際、細胞の中ではDNAが複製されます。複製されたDNAは、微小管という管状のたんぱく質によって引き寄せられ、分裂後のそれぞれの細胞に分けられます。この微小管のはたらきを阻害するのが微小管阻害剤です。
トポイソメラーゼは、細胞分裂の過程でDNAの切断と再結合を助け、二重らせん構造をときほぐすはたらきを持つ酵素です。トポイソメラーゼ阻害剤は、そのはたらきを阻害します。
それによってDNAが切断されたまま再結合されなくなるため、がん細胞は死滅してしまいます。
イリノテカン(カンプト、トポテシン)
血球、骨髄、脾臓、心臓、肺、肝臓等に高濃度に分布し、急性白血病に対して有効性を発揮するとされています。
エトポシド(ベプシド、ラステッド)
注射剤と内服薬があり、どちらも小細胞がん、悪性リンパ腫に用いられます。それ以外に、注射剤は急性白血病、精巣腫瘍、膀胱がん、絨毛がん、小児の固形がんにも使われます。
エリブリン(ハラヴェン)
2011年4月に承認された日本生まれの新しいお薬です。手術不能・再発乳がんに対して、単剤で生存期間を延長できるようになりました。
ソブゾキサン(ペラゾリン)
エトポシドとおなじトポイソメラーゼU阻害剤です。DNAを切断した後、トポイソメラーゼと複合体を形成し、DNAの再結合を阻害し、がん細胞の増殖を抑えます。
ドセタキセル(タキソテール)
転移・再発乳がんや進行肺がんの標準治療薬の1つです。細胞分裂に関与する微小管のはたらきを阻害して、がん細胞を死滅させるとされています。
ノギテカン(ハイカムチン)
イリノテカンと同じく、植物アルカロイドに分類されるトポイソメラーゼ阻害剤です。日本では小細胞肺がんの治療薬として認可されています。
パクリタキセル(タキソール)
アメリカで卵巣がんの治療薬として認可され、現在では、乳がんや肺がん、胃がんなどさまざまながんの治療に世界各国で広く用いられています。
パクリタキセル注射剤(アブラキサン)
2010年7月に承認されました。アレルギー症状が起こる可能性の高い溶媒を使用していないため、デカドロン等のステロイド剤の前投薬を必要としません。
ビノレルビン(ナベルビン)
非小細胞肺がん、手術不能または再発した乳がんに用いられます。細胞の分裂時に重要な働きをする微小管の合成を阻害して、がん細胞の分裂を妨げます。
ビンクリスチン(オンコビン)
多剤との併用によりさまざまながん治療に用いられており、とくに小児がんでは、最もよく使用されている薬のひとつとなっています。
ビンデシン(フィルデシン)
ビンブラスチンをもとに合成された抗がん剤です。シスプラチンとの併用で肺がん治療に用いられるほか、白血病、食道がんなどにも使用されます。
ビンブラスチン(エクザール)
ニチニチソウという植物から抽出された代表的な植物アルカロイドの1つで、細胞分裂の際にはたらく微小管の形成を阻害して、がん細胞の分裂を妨げます。