貧血が起こるプロセスと副作用が出やすい抗がん剤

血液細胞を作っている骨髄に抗がん剤の影響がおよぶと、骨髄が作り出す赤血球、白血球、血小板が減少します(骨髄抑制)。赤血球は、中に含まれるヘモグロビンという赤い色素が、肺で受け取った酸素を全身の細胞に運搬、供給することによって、生命を維持する重要な働きをしています。

眩暈や倦怠感に悩むがん患者

抗がん剤により赤血球やヘモグロビン量が著しく減少すると、組織が酸素不足に陥り、貧血の症状が現れます。

1回の抗がん剤の治療で影響を受けた骨髄は1ヶ月の間に回復します。そのため、抗がん剤を使用してからすぐに貧血になるわけではなく、毎回の抗がん剤治療で赤血球が十分に作られない時期が積み重なり、徐々に貧血になったり、赤血球が作られる際に成分である鉄や蛋白質が不足していると、赤血球が十分出来なくなり、貧血になります。

症状はヘモグロビンの量が低下するにつれて重くなっていきます。軽症の場合は、皮膚や唇、まぶたの裏などが青白くなる程度ですが、症状が見られないことも少なくありません。

組織への酸素供給が低下すると、心拍数や呼吸数の増加、動悸、息切れなどが現れ、脳や抹消細胞への酸素供給が低下すると耳鳴り、めまい、疲労、倦怠感などが起きてきます。

そして全身が酸素不足になると、低体温、心不全やむくみが生じたり、昏睡に陥って生命が危険になる場合もあります。

貧血が起こりやすい抗がん剤
シスプラチンカルボプラチンなどのプラチナ系、ドキソルビシンエピルビシンなどのアントラサイクリン系、タキソールやタキソテールなどのタキサン系の抗がん剤です。

貧血対策のポイントは保温による血行促進と食生活

まず、体全体に酸素が不足しがちになので、安静にしていたほうがよいです。だからといって、安静にしていることで新陳代謝が不活発になり、動かないことで食欲も出なくなってしまうのではいけません。

化学療法の担当医

息苦しさやめまいなどがなければ、日常の生活を続けていてもかまいません。つまり、症状が出なければ普段どおりでよいということです。

貧血は体全体の酸素が不足しますので、手や足の先が冷たく感じたり、痺れるなどの感覚異常が起こったりします。靴下を履いたり、上着を一枚多くして保温することにより、血管が広がって血液の通りがよくなり、その結果として酸素が組織に十分に運ばれるようになります。

食事は貧血に限らず、血球を作る際の重要な材料になります。とくに、血球の成分である蛋白質が必要です。蛋白質の多い食品は、肉、魚、牛乳、チーズ、大豆などです。

また、同じように赤血球の成分であるヘモグロビンは、鉄でできているので、レバーや海藻類、ほうれん草、イワシなどの鉄分の多い食品をとるようにしましょう。

さらに、蛋白質と鉄をつなぎ合わせる重要な役割をしたり、鉄分の吸収を浴するのがビタミン類です。野菜や果物、卵黄などにビタミンが多く含まれています。