感染症が起こりやすい抗がん剤と対策

抗がん剤は、がんではない正常な体の色々な部分にも薬の作用が及び、特に骨髄で血液を作る働きや消火器(胃や腸)のはたらきに影響を与えやすいのです。

感染症で死亡するケースもあります

したがって、抗がん剤を使用した場合には骨髄(血液を作る元の細胞)で血液を作る機能が低下して、白血球や赤血球、血小板といった血液全体が減少します。

白血球には、体内に侵入したウイルスや細菌などを死滅させる働きがあります。したがって、白血球が減少すると、体内に病原菌が増殖して、肺炎などの感染症が起こる場合もあります。適切な対応を怠れば患者さんが死亡することにもなりかねません。

実際、抗がん剤の数ある副作用のなかで、最も重症かつ死亡率が高いのは、白血球が減少した時に感染する感染症によるものです。医学的には「発熱性好中球減少症」という名称で呼ばれています。

抗がん剤を使用する医師は、この白血球減少や発熱性好中球減少症への対応法、予防法、治療法について精通している必要がありますが、抗がん剤の専門家が少ない日本では、欧米先進国ほど十分に対応できていないという指摘があります。

治療開始後10日〜2週間くらいで、最も白血球が減少しますが、3週間くらいたつと、白血球の数はもとに戻るとされています。白血球や血小板の減少が重症になると、38度以上の発熱や出血が起こることがあります。

一方、赤血球が減少すると、めまいなどの貧血の症状が起こりやすくなります。これは、治療を始めて数週間から数ヶ月くらいで起こるとされています。

感染症が起こりやすい抗がん剤
フルオロウラシルメトトレキサートシクロホスファミドエピルビシンイリノテカンパクリタキセルなどです。

対策
感染の予防としては、体の中に病原体を侵入させないことが最も大切です。抗がん剤による治療で白血球が減少したときに感染すると、少ない白血球で細菌やウイルスに対応しなければならないので、時間もかかります。

感染しやすい場所からの病原体の侵入防止を防ぐため、手をよく洗い、うがいをしましょう。口のほかに尿道や肛門も感染しやすい経路です。排泄物が出るところなので、汚れやすく、いつもきれいにしておくことが大切です。排泄後は水洗いするのが最もきれいにできる方法です。

ほかに点滴などをしている場合には、その部分が濡れたりしないようにすることです。手術の傷のガーゼも同じように濡らさないようしましょう。

ガーゼが外側からぬれると、外界と接していたガーゼの表面の細菌などが、ぬれることで浸透し、傷口まで運ばれることになります。

また、肺炎を予防する方法としては、きれいな空気を吸えるようにすることが重要です。その方法としては、空気清浄機があります。病院では、患者さんの白血球の数値によってベッドの枕元に空気清浄機を取りつけています。